魔法のマネジメント4 of ㈱インサイト経営

株式会社インサイト経営

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第4話 目標とノルマ 

 営業という職業には目標やノルマがある。もちろん1年生の風太にも課せられた。数値目標は営業所単位で設定されており、マネジャーによって営業マン単位にも振り分けられていた。

 風太が入社した頃は全社的にも売上は下降ぎみで、当時、営業マンが全国に60人くらいいたが、目標を達成している者はほとんどいなかった。風太の入社した年に関しては、達成した営業所は16営業所のうちたったの1つで、営業マンでは3人しかいなかった。若手の営業は数値をつくれず、マネジャーである営業所長が営業所内の数値の大半を担っていることが多かった。

 営業所における個人数値は、月2回行われる販売会議の場で検討されていった。1年生の風太が追求される場面はあまりなかったが、先輩社員は所長に厳しく追求されることが多かった。月初には今月の見込み状況とその対策を具体的に、月末には当月の反省と次月対策について細かく確認された。日頃、風太に先輩風を吹かせている営業マンも会議の時は形無しだった。

 月初会議における営業マンの発表と所長コメントの例を以下のとおり紹介する

 営業マン:
「売上目標600万円に対し、現在300万円。ショート▲300万円です」
「見込は○○会社にて50万、□□会社60万・・・・で合計300万です」
「この見込のなかから、200万まで決められます」
「また、その他のからなんとか100万つくり目標を達成します」
「今月のノルマは目標どおり600万でお願いします」

 所  長 :
「見込企業の○○会社の状態は?」

 営業マン:
「先月から延びている見込みですが、今月結論がでそうです」

 所  長 :
「その根拠は?」

営業マン:
「先方が今月末までには結論を出すと言ってますので大丈夫です」
「それに競合もなく、ほぼうちで決まりです」

所  長 :
「そうか、・・・・・・・・・・・・・・。」
「ところで、見込以外の100万はどうやってつくるんだ?」

 営業マン:
「過去客を50社リストアップしましたので、この中から」

所  長 :
「具体的な商品イメージは何だ?」

営業マン:
「え~と。・・・・・・・・・・・・・・。」

所  長 :
「なんだ。具体的な商品を想定できてないのか?」
「そんなことで、数値を作れるわけないだろう。甘いよ!」
「そもそもお前はツメが甘すぎる!」

以下所長の説教が続く・・・
風太は1日でも早く一人前の営業マンになりたいと思った。
しかし、3年間のうちで達成できた月はほんのわずかだった。

Doticon_grn_Comment.png解説


 コンサルタント会社といえども、営業の世界は数値が全てだった。販売会議では緊張感漂う異質な空気が流れていた。目標達成できない者は、ただ言い訳をする場でしかなかった。

風太の会社における目標とノルマの考え方

目 標:各人に振り分けられたもので年初に決められている数値
ノルマ:見込を考慮し、今月どこまでやれるかを自己申告する数値

実際には、目標達成できない者はあまり低い数値で自己申告できる雰囲気ではないので、背伸びした数値を申告することになる。結局、ノルマも未達になることが多い。

所長と営業マンは大違い

 営業マンは「できないものはできない」と心の中では開き直っているのだが口にはださない。ただ謝るだけ・・・。会議が早く終わることを祈っている。数値構築のための対策 も報告のために作っているだけという感じ。

  しかし、所長は営業所の数値を一身に背負っているので危機感が全く違う。勢い営業マンを追い詰める場になり易かった。所長によっては普段のうっぷんを会議の場でぶちまける人もいた。的にされた営業マンは悲惨だった。

 このような、メンバーによる単なる数値あわせの報告や、個人追求になってしまっている販売会議が非常に多い。理想は、本当にやれることを皆で真摯に検討し、実践できる勇気を醸成する場として活用することが望ましい。

 後年、風太はこの理想に近い営業所の一員として活躍することになるが、入社後3年間は会議のためにマイナスのエネルギーを費やしたものだった。

顧客に振り回される営業マン

 見込を何ヶ月も引きずり、最後はいつのまにか消えていく・・・。売れない営業マンの典型だ。本編の所長との会話でも、「先方が今月中には・・・」と営業マンは報告しているが大抵は決まらない。今月中に決めたいのは営業マンの勝手な都合で、顧客はいつでもいいと思っているものだ。

 もしかすると検討すらされていないかもしれない。実績がなく、自信のない営業マンほど顧客に振り回されている。→自信がないから、主張ができない→主張がないから、提案に重みがない→重みがないから、あとまわしにされ検討されていないことさえあるそして、月末が近づくと慌てて訪問し、「そろそろ結論はでましたか?」などと尋ねる大概は、「いやー忙しくてね。それどころじゃないんだよ」と言われる。

 そんなことを何ヶ月も繰り返している営業マンは多いはずだ。腫れ物に触るように顧客と接しても受注はできない。